財産開示手続について

債権回収において、債権者が任意に債務者の財産状態を把握する方法については「債務者の財産状態について」で説明しました。
債務者の財産状態を把握する方法としては、それ以外に、法的な制度として財産開示手続という制度がありますので、今回はその概要を説明します。

1 手続の概要について

財産開示手続は、債務者が裁判所の指定する期日(財産開示期日)に出頭し、自己の財産状態について陳述しなければならないとする法的手続です。

財産開示手続は、後記2の要件を満たす債権者の申立てにより、裁判所が実施決定の判断を下して開始されることになります。

裁判所は、財産開示手続の実施決定が確定すると、財産開示手続を指定して債務者を呼び出します。呼び出しを受けた債務者は、あらかじめ財産開示期日における陳述の対象となる財産を記載した財産目録を提出することになります。

財産開示期日に債務者が出頭すると、債務者は宣誓のうえ、自己の財産状態について陳述しなければなりません。債権者は、当該期日において、裁判所の許可を得て債務者に質問することもできます。

債務者が正当な理由もなく、財産開示期日に出頭せず、期日における宣誓もしくは陳述を拒み、または虚偽の陳述をしたときは、30万円以下の過料に処せられることになります(民事執行法206条1項)。

2 申立の要件

財産開示手続を申し立てるには、以下の(1)~(3)の要件を満たす必要があります。

(1) 債権者としての要件

A) 執行力のある債務名義の正本を有する金銭債権の債権者
または
B) 一般の先取特権を有することを証する文書を提出した債権者

上記A)の要件については、仮執行宣言を付した判決、執行証書、支払督促は含まれない点に注意が必要です。

(2) 財産開示の必要性

A) 既に実施された執行手続における配当等の手続において、債権者が当該金銭債権の完全な弁済を受けることができなかった場合
または
B) 知っている財産に対して執行手続を実施したとしても、債権者が当該金銭債権の完全な弁済を得られないことの疎明があった場合

(3) 債務者が申立ての日前3年以内に、財産開示期日においてその財産について陳述していないこと

3 財産開示手続の実効性

財産開示手続の概要は上記のとおりですが、この制度は、債務者自身に陳述することを求めるにすぎないという点に加え、債務者がこれを拒んだことに対する制裁(前記1)が軽微である点で、必ずしも実効性を期待できない面は否定できません。

財産開示手続を含め、債権回収をご検討されている場合は、当事務所にお気軽にご相談ください。

この記事は弁護士が監修しております。

東京中央総合法律事務所 弁護士 河本憲寿(東京弁護士会所属)
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