少額訴訟について

少額軽微な金額をめぐる紛争で、複雑困難でない事件については、少額訴訟という手続があります。これは、紛争額に見合った時間と費用の範囲内で、利用者が簡易迅速かつ効果的に解決することを目的とした簡易裁判所における特別な訴訟手続です。
以下では、少額訴訟について概要を説明します。

1 少額訴訟の定義について

少額訴訟とは、簡易裁判所において、60万円以下の金銭の支払いの請求を目的とする訴訟について、原則として1回の期日で審理を完了し、相当でないと認める場合を除き直ちに判決を言い渡す訴訟をいいます。

60万円以下の金銭の支払いを請求する場合にのみ利用できる手続ですが、請求元本の金額が60万円以下であれば、利息・遅延損害金を合算して60万円を超えても利用することができます。

少額訴訟を利用するためには、訴えの提起に際して少額訴訟による審理及び判決を求める旨の申述をする必要があります。但し、同一の簡易裁判所において同一の年に10回を超えて少額訴訟を利用することはできません。

2 少額訴訟の手続について

少額訴訟の手続では、通常訴訟と異なる以下の特徴があります。

(1) 審理

1.一期日審理の原則

少額訴訟では、特段の事情がある場合を除き、最初にすべき口頭弁論の期日において、審理を完了しなければならないとされています。そのため、当事者は、債権を裏付ける主張や証拠を期日前又は期日において全て提出する必要があります。

2.証拠

少額訴訟における証拠調べは、即時に取り調べすることができる証拠に限られるとされています。例えば、契約書などの書面のほか、在廷証人や電話会議の方法を利用した証人尋問、出席した当事者尋問などです。

3.通常訴訟への移行

少額訴訟の被告は、訴訟を通常の手続に移行させる旨の申述を行うことができます。この申述がなされると、訴訟は通常の手続に移行することになります。
但し、被告が最初にすべき口頭弁論期日において弁論をし、またはその期日が終了したときは、通常訴訟への移行申述をすることができません。
その他、裁判所による判断により、通常訴訟に移行する場合があります。例えば、事案が複雑で争点も多く、一期日審理による解決が困難なような事件の場合です。

4.反訴の禁止

少額訴訟においては、一期日で審理を完了させるため、被告から原告に対して反訴を提起することができません。(反訴とは、同一手続内において被告が原告に訴えを提起する手続のことを言いますが、通常訴訟の場合は要件を満たせば許容されます。)

(2) 判決

1.判決方法

少額訴訟における判決の言渡しは、相当でないと認める場合を除き、口頭弁論の終結後直ちになされます。
裁判所が即日判決を言い渡すことが相当でないと認めるときは、通常の言渡しの手続(判決言渡し期日を指定され、当該期日に言い渡される)となります。

2.必要的仮執行宣言

少額訴訟において請求を認容する判決が出される場合、裁判所は職権で仮執行宣言をしなければならないとされています。
判決に必ず仮執行宣言が付されることから、少額訴訟の判決はその確定を待たずに債務名義となります。

3.判決による支払いの猶予

少額訴訟における判決では、裁判所が被告の資力その他の事情を考慮して特に必要があると認めるときは、支払時期や分割払いの定めをすることができます。この判決による支払いの猶予の定めに対しては、原告も被告も不服を申し立てることはできないとされています。

3 少額訴訟における異議申立てについて

(1) 控訴の禁止と異議申立て

少額訴訟の終局判決に対しては、通常訴訟と異なり控訴をすることができません。
ただし、不服申立手続として判決に対する異議申立てができます。

当事者から適法な異議申立てがなされたときは、訴訟は、口頭弁論の終結前の程度に復するとされています。すなわち、簡易裁判所で口頭弁論が再開され、少額訴訟の続行として審理が行われます。

この不服申立手続(異議審)による判決は、通常の手続によるとされており、即日判決の原則の適用はありません。通常の訴訟手続と同様に、判決期日が指定されて判決言渡しがなされます。

(2) 異議後の判決に対する不服申立て

異議後の判決に対しては控訴をすることができず、不服申立てとしては特別上告によるとされています。

少額訴訟による債権回収をご検討されている場合は、当事務所にお気軽にご相談ください。

 

この記事は弁護士が監修しております。

東京中央総合法律事務所 弁護士 河本憲寿(東京弁護士会所属)
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