少額訴訟の使いどころについて

比較的少額の貸金の回収に「少額訴訟」を用いるべきかとのご相談を頂くことがあります。そこで、今回は、少額訴訟制度の特性を踏まえ、少額訴訟の用い方について説明したいと思います。

少額訴訟とは、簡易裁判所において、元金60万円以下の金銭の支払いを求める訴訟について、原則として1回で審理を終了し、相当でないと認める場合を除き、直ちに判決を言い渡すものをいいます。
少額訴訟の最大のメリットは、基本的に1回の裁判で終了するため、早期の解決が期待できるところです。これは迅速性が要求される債権回収において大きなメリットといいます。
もっとも、少額訴訟手続は、相手方がこれに反対した場合は、通常の訴訟手続に移行してしまいます。せっかく迅速な解決を目指して少額訴訟を提起しても、相手方が反対すれば、むしろ通常の訴訟への移行手続等でかえって時間がかかってしまいます。
そこで、少額訴訟を利用するには、ご自身の金銭トラブルが、この手続に向くものか否か検討しないといけません。
具体的には、上記の少額訴訟の特性から、証拠が乏しい場合や複雑な事案の場合、1回の裁判期日で証明ができず、いい結果とならないことが予想されます(最悪、請求が認めてもらえません。)。このようなケースに少額訴訟は向かないでしょう。
また、こちらの請求に対して相手方が強く争っている場合も、少額訴訟には向かないといえます。なぜなら、相手方が、簡易迅速な少額訴訟手続ではなく、通常の訴訟手続で慎重に審理されたいと考え、少額訴訟に反対した結果、通常訴訟に移行してしまう可能性が高いからです。
これら特性から、1回で証明できるだけの証拠があり、かつ、相手方の強い抵抗が予想されない場合は、少額訴訟を用いるメリットがあるといえます。
少額訴訟を用いるかご検討される際の参考になれば幸いです。

この記事は弁護士が監修しております。

東京中央総合法律事務所 弁護士 河本憲寿(東京弁護士会所属)
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