モンスター社員への対処法:適切な退職勧奨をするには

1.はじめに

上司や同僚へのパワーハラスメントを行う、顧客や取引先とのトラブルを起こす、業務命令を無視する、度重なる遅刻や無断欠勤を繰り返す。近年、いわゆる「モンスター社員」の問題が企業の悩みの種となっています。

しかし、安易に解雇や退職勧奨を行うと、労働問題に発展するリスクがあります。本記事では、モンスター社員への適切な対応方法と、法的リスクを回避しつつ退職に導く方法について解説します。

2.モンスター社員とは

モンスター社員とは、以下のような問題行動を取る社員を指します。

  1. 上司や同僚へのパワーハラスメント
  2. 顧客や取引先とのトラブル
  3. 業務命令の無視や怠慢
  4. 会社の機密情報の漏洩
  5. 度重なる遅刻や無断欠勤

これらの行動が継続的に見られ、他の従業員や会社全体に悪影響を及ぼす場合、対応が必要となります。 

3.法的リスクを考慮した対応

モンスター社員を単に解雇すると、解雇権の濫用として訴えられ、解雇が無効となる可能性があります。労働契約法第16条において、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と定められています。そこで、規則等に従って慎重に対応することが重要です。

(1)問題行動を記録し、改善の機会を与える

モンスター社員と面談を行い、問題点を明確に伝え注意指導をします。まずは口頭注意から始め、改善されない場合には、書面による注意指導を行います。また、改善目標の設定とその期限を設定し、改善を求めます。問題行動について注意指導をした事実を証拠として保存しておくことが有効です。

(2) 始末書等を提出させる

注意指導をしたにもかかわらず、モンスター社員に改善が見られない場合、モンスター社員に対して始末書や誓約書を提出させます。問題行動があったことをモンスター社員自身が認めていることを証拠として保存することができます。

(3) 懲戒処分を行う

モンスター社員による問題行為が就業規則や法令等に照らして懲戒事由に当たる場合には、減給や出勤停止といった懲戒処分を行います。

4.適切な退職勧奨の方法

モンスター社員に退職を求める場合、退職勧奨を行うこととなります。退職勧奨とは、解雇とは異なり、社員が自主的に退職することを求めることです。すなわち、会社と社員との間での合意によって退職することをいいます。

退職勧奨を執拗に行うと、退職を強要されたと後々主張される恐れがあるため、退職を求める十分な証拠と理由を準備しておくことが重要です。また、退職条件の提示(退職金の上乗せなど)を示して複数回面談するなど、退職の強制にならないよう注意が必要です。面談の内容を記録しておくことも有効です。

5.弁護士への相談

モンスター社員への対応は法的リスクが高いため、その対応は、慎重かつ計画的に行う必要があります。感情的な対応は避け、法的リスクを最小限に抑えながら、問題解決を図ることが重要です。適切な手順を踏むことで、職場環境の改善とリスク回避の両立が可能となります。

そこで、早い段階で労働問題に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。法的リスクの評価、適切な対応手順の助言、退職勧奨の際の交渉戦略及び訴訟リスクの軽減について弁護士の適切な助言を得ることで、より良い職場環境の実現につながるでしょう。

当事務所では、労働法に詳しい弁護士がこれらの法的手続きを遵守し、会社の利益を守りながら、サボタージュ型モンスター社員に対する適切な法的対応を支援しています。

ご質問や具体的なケースについての詳細な相談がございましたら、いつでもお気軽にご連絡ください。

この記事は弁護士が監修しております。

東京中央総合法律事務所 弁護士 河本憲寿(東京弁護士会所属)
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