前回,「預金債権の相続①」の記事で,相続財産は相続開始とともに相続人全員の共有となることを説明しました。
今回は,前回と同様,ちゅうおう銀行に100万円の預金を持っていた花子さんが死亡し,一郎さんと二郎さんが花子さんの相続人となった事案をもとに,相続財産に預金が含まれていた場合,預金も相続人全員の共有となるのかという問題について説明します。
そもそも,預金とはどのようなものなのでしょうか。
この場合,花子さんは,ちゅうおう銀行から100万円を引き出すことができます。
言い換えると,花子さんは,ちゅうおう銀行に対して,「私に100万円を支払ってください」といえる権利を持っているのです。
このように,ある特定の人(花子さん)が,別の特定の人(ちゅうおう銀行)に対して,金銭の支払いという特定の行為を要求できる権利を金銭債権といいます。
一般に,金銭債権は,一定の割合で分けることができる性質を有しています。
たとえば,「100万円払ってください」という権利は,「40万円払ってください」という権利と,「60万円払ってください」という権利に分けることができます。
このような権利を分割債権といい,相続財産に分割債権が含まれていた場合,相続開始と同時に,各相続人が法定相続分に従って取得することとなります。
したがって,花子さんの事案では,花子さんの死亡と同時に,花子さんの子である一郎さんと二郎さんが,1:1の法定相続分に従い,ちゅうおう銀行に対する50万円の預金債権をそれぞれ取得することとなります。
そうすると,一郎さんと二郎さんは,遺産分割をする前であっても,ちゅうおう銀行から50万円を引き出すことができるのでしょうか。
この点については,次回,説明することとします。