前回に引き続き,慰謝料請求権が相続財産に含まれるかについて検討します。
かつての判例は,被害者本人が慰謝料請求権を行使する意思表示をした場合にのみ,慰謝料請求権は相続の対象となる旨の判断をしていました。
しかしながら,被害者が亡くなる直前にどのような言葉を残したのかにより慰謝料請求権が相続されるか否かの結論が変わるというのは何とも不思議な話です。
また,被害者が重傷を負った後に死亡した場合には,慰謝料を請求する意思表示をできることもありますが,即死してしまった場合には被害者本人が意思表示をする余地がありません。
このような批判を受け,現在では判例を変更し,被害者本人が慰謝料請求権を放棄したような特段の事情がない限り,被害者本人による慰謝料請求権を行使する旨の意思表示がなくとも,当然に相続の対象になると扱われています。