前回は,相続の開始原因の1つに失踪宣告があること,失踪宣告には,普通失踪と特別失踪があることを説明しました。
今回は,普通失踪により失踪宣告を受けるための要件(要素,条件のこと)について説明します。
普通失踪による失踪宣告は,失踪者の生存が証明された最後の時から7年間,その生死が明らかでない場合に,利害関係人の請求により,家庭裁判所が審判によって行います(民法30条,家事別表第1の56)。
これらを各要件ごとに分解すると,家庭裁判所が審判を行うには,①不在者の生死が明らかでないこと,②生死不明状態が失踪者の生存が証明された最後の時から7年間続いていること,③利害関係人の請求があることが必要となります。
「①不在者の生死が明らかでない」とは,不在者が生存していることも死亡していることも証明できない状態をいいます。
「②失踪者の生存が証明された最後の時」とは,不在者の生存が知れた最後の時のことをいい,最後に不在者と会った日,不在者から最後に手紙やメールが送られてきた日などがこれにあたります。
「③利害関係人」とは,不在者に対して失踪宣告をすることにつき法律上の利害関係を有する者をいい,具体的には,不在者の配偶者や親子,推定相続人,受遺者などがこれにあたります。
次回は,特別失踪により失踪宣告を受けるための要件について説明します。