相続財産にならない財産・権利について

相続が開始すると、被相続人の財産に属した一切の権利義務は、原則として相続人がすべて承継することになります(民法896条)。

しかし、以下のように相続財産にならないものもあります。

1 一身専属権

一身専属権とは、特定の人にのみ帰属し他人に移転することがない権利を言います。

法律の規定があるものとして、代理権、使用貸借における借主の地位、雇用契約上の地位、組合員の地位などがあります。

また、法律の規定がないものとして、扶養請求権、財産分与請求権等があります(但し、これらの請求権も調停や審判等により内容が確定し請求権が具体化した場合には通常の金銭債権と変わらないので、相続財産となります)。

2 祭祀財産

祭祀財産とは、祖先の祭祀のために必要な財産をいい、系譜、祭具、墳墓の3つの種類があります。

系譜とは家系図、祭具とは位牌、仏壇、神棚、神具など、墳墓とは墓地や墓石などを指します。

これらの祭祀財産については、祭祀の主宰者に帰属するとされており(民法897条)、遺産分割の対象にはなりません。

なお、祭祀の承継については、(1)まず被相続人が指定により、(2)指定がない場合には慣習により、(3)被相続人の指定や慣習がない場合には家庭裁判所の審判により決めることになります。

3 遺骨

遺骨については、判例上「慣習上の祭祀主宰者に遺骨が帰属する。」(最判平成元年7月18日)とされている通り、相続財産になりません。

4 香典

香典は、祭祀主宰者や遺族が支出を余儀なくされる葬儀費用等の支出の負担を軽くするために贈与するという趣旨のものであり、相続財産には含まれません。

この記事は弁護士が監修しております。

東京中央総合法律事務所 弁護士 河本憲寿(東京弁護士会所属)
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